☆「未成年」 作詞・作曲: 柴田 淳 編曲: 坂本 昌之・柴田 淳 C/W: 幸せなうた サーカスがやってきた 発売:2004/1/28
1番は,ピアノ&ストリングスのシンプルな感じです。何となく「月光浴」を彷彿させる曲調です。うら寂しい感じが,不安で戦いて(おののいて)いる感じを良く出しています。2番からは,サウンドに厚みが増していき,ドラムなどの音が入ってきます。そして,2番のサビ&エンディングでは,力強くそして切々と歌い上げています。 この曲全体に流れているのは,何ともいえない不安感と寂しさです。冬に薄暮の透明感と寂しさが情景として浮かんでくる,そんな曲だと思いました。 〈歌詞について〉 「未成年」という題から思い浮かぶ歌詞には二通りあります。一つは,(それまではどんな過去があろうとも)目の前にある「これから」は,決して悪いものではないはずだから,希望を持って歩いていこう! と,いうものです。もう一つは,未成年特有の危うさ,不安感を描いたものです。この曲は,曲調から見ても,歌詞から見ても,後者に属します。 曲の出始めの, 「ぼくらはただ 気付いて欲しかっただけで 誰も何も 壊すつもりはなかった 耳を塞いでいる 固く目を閉じている ぼくらを受け止められず 逃げ出した弱虫よ」 部分なのは,その不安感が出ています。「気付いて欲しかっただけ」「壊すつもりはなかった」と他者(大人)に対して依存し,助けてくれることを期待しているのに,それに対して大人は,「耳を塞ぎ,目を閉じ,僕達のことを受け止めるどころが,逃げ出してしまった… バカやろー!」だという内容だと思います。しかし一方でこのように思いながらもなお,この曲の主人公は, 「導いてよ どこまでも 孤独のない 温もりの場所へ 愛していて いつまでも涙の流し方を教えて」 と思っています。「逃げ出した弱虫よ」といっている大人達に,「導いてよ」「愛していて」「涙の流し方を教えて」とまだ依存しています。これが「未成年」特有の感情なのかなと思います。自分(達)が抱え続けている不満や怒り,不安を,本当は抱き抱えて欲しいのに,それをしてくれない大人への切なる訴え,2つの矛盾した感情〜「大人はどうせわかってくれない」と「わかって欲しい」〜が入り混じって,さらに不安定にしていく…,そんな感情。それが,よく表れています。 2番も基本的には,上記の1番と同じ流れだと思うのですが,最初の「ぼくらはただ 気付いて欲しかっただけで… …逃げ出した弱虫よ」の部分に該当する, 「思い出して あなたも歩いてきた路 触れられぬほど 脆くて美しい瞳 愛しさを知らない 愛し方を知らない ぼくらに怯えている 出来損ないの背中よ」 は,より攻撃的になっているかなと思います。「思い出して あなたも歩いてきた路 触れられぬほど 脆くて美しい瞳」と,大人達に,自分が未成年頃には,僕達と同じように不安で迷い続けていたはずでしょうと訴えかけています。でも,その不安を受け止めてくれない大人に,「愛しさを知らない 愛し方を知らない ぼくらに怯えている 出来損ないの背中よ」と攻撃しています。それでも, 「抱きしめてよ 痛いほど 鼓動を感じるくらいに 強く 耳を澄まし 向き合って ぼくらの魂の悲鳴 聞いて」 と,より強く自分を抱いていて欲しいと願っています。まぁ,こういうところが「未成年」特有の感情なんでしょうがね…。 「未成年」とい題名通り,歌詞の内容は,非常に「青くさい」僕達の心の叫びを歌った曲です。でも,十代後半から二十歳ぐらいには誰でも一度は感じたものを,「柴田淳」というフィルターを通して,よく描かれていると思います。 |